子どもの食事について、一度にどれくらいの量を与えればよいでしょうか?
これは、保護者からもよくある質問ですね。
みなさんご存じの通り、子どもは体の大きさの割に、たくさんのエネルギーと栄養素量を必要としています。
今回は、子どもの食べられる量について考えます。
■こどもの食べられる量は胃の大きさに関係
WHO(世界保健機構)のガイドラインでは、子どもの食事量について以下のように書かれています。
「子どもが一度に食べられる量は、子どもの胃の大きさや容量に依存し、通常は子どもの体重1kgあたり30ml程度。体重が8kgの子どもならば胃の容量は240mlであり、それ以上は一度に食べられないと考えるべきである。」
食事摂取基準に記載がる日本人の平均的な体位である参照体重は、
・0~5(月)6.3kg
・6~8(月)8.4kg
・9~11(月)9.1kg
・1~2(歳)11.5kg
・3~5(歳)16.5kg
胃の容量は
・0~5(月)189ml
・6~8(月)250ml
・9~11(月)270ml
・1~2(歳)345ml
・3~5(歳)500ml
ということになります。
もちろん、母乳や育児用のミルクの摂取量も、胃の大きさに依存しているため、体が大きくなるにつれてミルクを飲むことができる量が増え、離乳食開始時期には1回に200mlぐらいを飲むことができるようになります。
■離乳食の量と密度の問題
WHO(世界保健機構)のガイドラインでは、6か月から24か月までの食事では、エネルギー密度の高い食事内容とすることが推奨されています。
つまり、子どもの食べられる量には限りがあるため、1mlの食事で効率よくエネルギーと栄養素を摂取できるよう、シャビシャビではなく、ボタッとした密度の高い食事がすすめられています。
離乳食は、咀嚼嚥下機能の未発達な子どもの食事。ついつい水分を多くして、片栗粉でとろみをつけてしまいがちですが、薄めれば栄養量は減ってしまいます。
日本の離乳食は、乳離れのための練習と思われがちですが、WHOは母乳やミルクで足りない栄養を補完するための食事(補完食)として、その質の大切さを示しています。
保育園では、「量」だけでなく「栄養素の詰まった密度の高い食事を作る」という視点が必要です。
■幼児食の量について
幼児食についても、もちろん量と密度の関係がありますが、昔ながらの保育園給食の量をみると、以下の通り「適量」といえるでしょう。
3歳児食
ごはん 110g
具入り汁 150g
主菜 40~60g
副菜 40~80g
果物 40g
お茶 適量
これは、保育園でよくある献立の構成であり、分量はおおよそ子どもの胃の容量である500mlぐらいになります。
また、保育園では年齢に合わせて食べることができる量を考慮して、未満時は、1回の食事と2回の補食、以上児は、1回の食事と1回の補食を提供して、必要なエネルギーと栄養素量を提供しています。
保育園給食は昔から
・子どもが無理なく食べきることができる量で、
・必要なエネルギー、栄養素量を摂取している
ということですね。
給食管理ソフト「わんぱくランチ」では、メインの献立作成画面に、献立分量の合計量とエネルギー栄養素量が確認できるようになっています。一度確かめてみてください。
■少ない量しか食べることができない子どもへの対応
少量しか食べることができない子どもがいる場合、食べられない原因を明らかにしましょう。
実際に、保育園と家庭で「食べている食品と量」を確認し、成長曲線で子どもの発達状況をみます。
問題がないケースは、、、
食べる量が少なくても、しっかりバランスよく食べることができていて、小さめでも成長曲線にのって成長している場合。
問題があるケースは、、
食べる量が少ないのに、体格がよい場合(普通~肥満傾向)です。
私が自治体で働いていた時、「あの子は何を食べて大きくなっている?」と思う程、給食を食べる量が少ない子がいました。
このような場合、家庭で密度の高い食品を食べている可能性があります。
例えば、チョコレート、ドーナツなど。
低年齢児で肥満でなくても、量を食べることができるようになった学童期に肥満傾向になるので、食習慣の改善が必要です。
その他にもいろいろケースがあります。
以前、「牛乳」の飲み過ぎで、食事を食べることができない子の指導をしたことがあります。
その子は、液体を摂取しすぎていて、他の食品を必要量食べることができない状況でした。
牛乳は液体のため、米や魚に比べて栄養密度が低い食品。体格は「やせ傾向」でした。
この園児に対しては、保護者と話し合い、家庭では、「牛乳」を止めて「牛乳を固めた牛乳寒」に変えて、牛乳の摂取量を減らし、食事を摂るようにすすめてもらいました。
当初は、噛むことに疲れてしまい、食事が進みませんでしたが、半年ほどで、保育園でも1人前量を食べることができるようになりました。
■まとめ
子どもたちが健康に過ごすためには、
多様な食品を適切な方法で調理したおいしい食事を、
咀嚼・嚥下機能に合わせた形態で無理なく食べ、
適切な栄養を摂取することが必要です。
子どもたちは、正しい食事を食べる経験を積み重ね、学習し、健康な食習慣と正しい味覚を獲得します。
乳幼児期の食事の質は、将来の健康にも大きな影響を与えます。
わんぱく子どもの食事研究所の献立は、多くの保育園でご活用いただいており、とても大きな責任を感じています。
現在、研究所では来年4月からの献立作成に向けて、
・食育の視点を持った献立の目標
・不足しがちな栄養素を補うことができる料理の開発
・調理の負担を減らすための調理技術の研究
を日々行っています。
子どもたちの未来の健康に貢献できるよう、みなさんのお仕事のサポートができるよう、しっかり研究していきたいと思っています。