減塩のための料理開発

食事摂取基準2020年版で食塩の目標量が下がり、現場では、減塩が課題となっています。

研究所にも、減塩の方法について、度々ご相談をいただきます。今回は、研究所で新たに取り組んでいる調理法をご紹介します。

 

■食塩相当量が多い料理を確認

わんぱくランチのお使いを皆さんは、サンプル料理画面の「塩↓」ボタンで、料理の並べ替えを行ってみてください。

一目瞭然!含まれる食塩含有量の多い順に、料理が並び変わります。

塩分量の多い料理は、

  • 汁物
  • 煮物

ですね。

もちろん主菜となる肉料理・魚料理にも食塩を使っていますが、栄養密度(100キロ当たりの食塩量)で見ると、特に野菜の汁物、煮物の食塩量の多さに驚きます。

エネルギーは生命維持に欠かせないものなので、減塩のポイントは、エネルギーが少なくて、食塩相当量の多い「野菜の汁物・煮物」といえます。

栄養密度の面から見れば、野菜の和え物等の食塩含有量についても検討する必要性を感じます。

 

■汁の減塩の方法

「汁」については、野菜の量を増やして「だし煮」にするのがおすすめです。

出汁の量は変えずに、煮落とすことで、野菜から出る水分と出汁が入れ替わり、野菜をおいしく食べることができます。

汁は、後で味をつけることができるので、その日の野菜から出たうま味を確かめた上で、味付けをすると、無理なく減塩ができます。

野菜の増量は、食事支援をする保育士さんに敬遠されることもあるようですが、多くの園で実践されていることです。

研究所では、名前を「汁」から「菜汁」にして、意識を変えるところからスタートしました。最近は「満菜汁」といったように、具沢山の汁の人気が高くなっているので、是非、保育園でも挑戦してみてください。

「菜汁」は、野菜の摂取量アップと減塩。2つの健康課題の有効な対策となります。

 

■煮物の減塩の方法

「煮物」については、「残った煮汁は摂取しないから問題がないのでは?」という意見があります。

しかしながら、大量調理の場合は、栄養・味・コストなど多方面から見て、もともと家庭で作るような煮物が良いとはいえません。

残った煮汁を捨てると、、、
煮汁に溶け出したカリウムなどの栄養素が摂取できません。

また、うま味成分も一緒に捨てることになります。
そして、出汁や調味料の必要量が増えるので、それなりにコストがかかります。

では、保育園の煮物はどのように作ったらよいのでしょうか?

研究所では、2通りのやり方で煮物の減塩をすすめています。

  • ひとつめは、今までの料理を減塩できるように調理法を工夫する。
  • ふたつめは、まったく新しい料理を考える。

ひとつめの調理法の工夫では、、、
最近、「加熱調理後、調味料をかけて、冷める際に味をしみこませる」といったことを試しています。

例えば、かぼちゃの煮物。蒸したかぼちゃに出汁の入った調味料を回しかけたると、冷める際に味が浸み込み、煮物のような仕上がりになります。

蒸した野菜にあんをかけても、葛煮のような仕上がりでおいしく食べることができます。

ただし、この調理法には限界があり、もちろん根菜類などには味が浸み込みません。そこで、やはり、ふたつめの「新しい料理を作る!」ということも必要になります。

考える時のポイントは、野菜だけで煮るのではなくて、肉や魚と一緒に煮たり、煮汁を使って野菜に味をつけるといった方法です。

研究所では、かじきの煮つけの際には、残った煮汁に焼き野菜を入れて、野菜の焼き浸しを作って副菜にしています。

また、さばの味噌煮は、たまねぎを一緒に煮ることで、煮汁がたくさん残ることはありません。

肉料理についても、肉団子とだいこんの煮物は、最後に片栗粉でとじて、そこにゆでた青菜を加えて一緒にいただきます。

メイン料理を作った煮汁を活用すると、うま味で野菜がおいしくなり、作業も簡単。新たに調味料を使うことなく減塩ができます。

 

■和え物の減塩の方法

鮮度が高い野菜は、ゆでたり、蒸したりするだけでおいしく食べることができるので、

  • かつおぶしの香りとうま味
  • のりの香り
  • ごまの油分とかおり

などを加えれば、食塩0gでもおいしく食べることができます。

減塩をしていると、野菜の甘さだけではなく、野菜にもともと含まれているナトリウム(食塩)にも気づくようになります。

そして、野菜に食塩やしょうゆを加えてしまうことで、浸透圧で水が出て、そこに野菜特有の成分まで流出し、返って食べにくくなることがあることにも気づくことができます。

調理スタッフと顔を見合わせて、「味付しない方がおいしい???」と・・・・。

減塩をしていると、野菜本来の味の特徴に敏感になります。味つけは、野菜の味を確認してから!を徹底するだけで、減塩につながると思います。

 

■さいごに

2020年の食事摂取基準では食塩の目標量が下がりましたが、2025年には、さらに目標量が下がることになります。

保育園では、調理法の工夫、食材の組み合わせの工夫などで、今の料理を作り変えながら、また、新しい料理を作りながら減塩を進めていく必要があります。

料理は、最後の塩加減で決まる!と言われる程、食塩は私たちに美味しさをもたらしてくれるものですが、保育園で求められている給食は、単なるおいしさではありません。

保育園給食の役割は

  • 健康な食事をおいしいと感じることができる味覚
  • 将来の健康につながる食習慣

の基礎をつくることです。

減塩をすすめる上で大切なのは意識改革だと思います。

研究所でも、昔は、わんぱくランチのサポートスタッフ(男性)に、「味のパンチがない!」と言われてイラっとすることがよくありましたが、最近は、スタッフの健康意識があがり、おいしく給食を食べることができています。

減塩は、数少ない科学的な根拠がある健康行動なので、研究所でも引き続き減塩料理の開発に励んでいきたいと思います。