子どもの食事研究所、所長の佐橋ゆかりです。
私が新米栄養士だった頃に、調理員さんによく言われたこと。
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「こんな時期に、○○をこんなにたくさん使うの?」
20代の頃の私は、食材の知識・旬の知識がありませんでした。
調理員さんから見ると、
「おいしくない時期」に「高い値段」で買っている!
ということだったのでしょう。
旬の食材は、ネットで検索すれば、すぐにわかります。しかし、実際に、園(地域)で購入できる食材は、ネット情報にピッタリと当てはまりません。
今回は、おいしい給食をつくるために、
食材の知識を増やす方法について考えます。
■旬(出盛り期)と出回り期の違いを知る
おいしい料理を作るためには、食材の旬を知ることは大切です。
旬(出盛り期)とは、野菜・果物・魚介類などが、最も美味しい時期をさします。
野菜・果物なら、作物に適した気候で露地栽培ができる時期。魚なら、産卵する前に餌をたくさん食べて、脂がのっている時期です。
旬は3段階に分かれています。
- 走り 出回り始める初物
- 盛り 一番多く出回る
- 名残り 過ぎる旬を惜しむ
この中で、最もおいしいのが「盛り」。この時期を「出盛り期」と呼ぶので、旬と出盛り期は、ほぼ同じ意味合いです。
その一方で、「出回り期」は、旬とは意味が異なります。こちらは、出荷量を反映したもので、野菜や果物に使われる言葉です。
近年は、農業の技術、貯蔵の技術、流通の進歩によって、多くの食材が、旬(出盛り期)に関係なく、1年間を通して、安定供給されるようになりました。
そのため、出回り期=旬ということではありません。
きゅうり、トマトの旬は夏ですが、冬の今でも常に店頭に並んでいますね。昔なら、店頭に並ぶ食材を見れば、旬を知ることができましたが、今は、食材の「旬」を自ら学び、活用する必要があります。
給食担当者には「出回り期」と「旬(出盛り期)」の両方の知識が必要です。
■食材の知識を深める3つのポイント
▼ポイント1
地域の「旬」をしっかり把握
流通が発達したため、私たちの食生活は、地域だけでなく、日本国内の各地域の「旬」の影響を受けています。
ネットで、食材の旬を調べると、〇月~〇月。と出たり、旬が年に2回あったりします。
保育園で「旬」を活かすためには、、、
地域を限定して、食材ごとに旬を把握する必要があります。
保育園では、自分の園に納品される食材に対して
- 時期ごとに
- どこから届いているものか(産地)
- その食材の特徴
に注目してみましょう。
例えば大根。一般的には、11月~2月が旬となっていますが、子どもの食事研究所(愛知県)に納品される大根は、1月になると「愛知県産」から「北海道産」に変わります。産地によって品質が異なるため、北海道産は、愛知県産より、やわらかく煮るのに時間がかかります。
もし、研究所が保育園だったとしたら、だいこんの旬は11月~1月だと考えて、献立を作成することになります。
県ごとに、収穫できる野菜や時期がわかるサイトをご紹介します。(野菜マップ)その他にも野菜に関する統計情報がまとまっています。
そして、野菜の生育状況や価格の見通しについては、こちらのサイトをご覧いただくとよいでしょう。毎月、月末に翌月分が公表されます。
▼ポイント2
「子どもに食べにくい時期」を把握
給食では、おいしい時期を把握することと同じぐらい、「子どもに食べにくい時期」を知ることが大切です。
キャベツを例にあげて説明します。
子どもの食事研究所がある愛知県はキャベツの生産県です。
愛知県産のキャベツは、11月(10月下旬)から6月まで出荷されており、愛知県民は、ほぼ愛知県産の「冬キャベツ・春キャベツ」を食べています。愛知県では、この時期がキャベツの旬ということになります。
それ以外の時期、7月~10月は、群馬県、長野県産のキャベツが出回りますが、地元の愛知県産に比べて野菜の甘みが少なくなります。
そして、1年の中で、最もキャベツが、子どもにとって食べにくくなるのが10月です。
愛知県産のキャベツが出回り始める前の数週間は、その他の時期に比べて葉と芯が固いため、キャベツのゆで時間を長くしたり、油の量を少し増やす等の工夫が必要です。
このように、給食では、食材ごとに「子どもに食べにくい時期」があることを把握した上で、調理・味付けをすることも大切です。
実は、これに気づいたのは最近です。秋鮭に合わせて、キャベツをたくさん使った「ちゃんちゃん焼き」を10月終わり~11月初めに試作すると、キャベツかやわらかくならない!
3年間、同じことが繰り返し起こり、やっと気づきました。調理法ではなく、キャベツそのものが原因だったことに気づくまでに3年もかかりました。
この視点で食材を見ると、たまねぎが柔らかくなりにくい時期など、いろいろわかりますよ。だいこんが夏に辛い!みたいなことが、それぞれの食材にあるということですね。
▼ポイント3
自分の目でみて学ぶ
農業を見たり、農家の方にお話を伺ったり、漁場に行くことは、なかなかできませんよね。
おすすめなのは、昔ながらの八百屋さん、魚屋さんに教えてもらうこと。もし、地域に小売店が残っていなかったら、地域の卸売市場に行くと、その地域の旬の食材、今、おいしいものがわかります。
ちなみに、名古屋の柳橋卸売市場の営業時間は朝の10時頃までで、8時を過ぎると、業者さんがいなくなって、一般の人が気軽に買い物できます。
ボヤーッと食材を見ていると、「今日は○○がおいしいよ。買って行ってよ!」と声を掛けられます。そんな会話をきっかけに、食材について教えてもらえたらよいですね。
ネットに頼り過ぎず、目の前の食材から学ぶことが大切。給食では、野菜・果物や魚を、専門の業者さんから購入していると、常においしい食材使うことができるし、知識も自然に増やすことができます。
しかし、これは地域によっては、とっても難しいこと。
今は小売店が少なく、大手スーパーや給食の食材卸業者は、作付面積が大きい特定の地域と提携し、価格縛りで食材調達を行うため、本当においしい!と思える「地元の食材」が購入しにくくなっています。
給食担当者は、食材を見極める知識を持って、食材の購入方法についても工夫することができたらよいと思います。
■さいごに
先日、ユーザーさんからお話をお伺いしました。
その園では、支払いを一括にするために食材会社と取引をする方針だそうですが、それだと、地元の旬の食材を子どもたちに食べさせてあげられないため、栄養士さんが、園長先生に掛け合って、特定の食材について旬の時期だけは、別の地元業者から購入しているそうです。
給食担当者の腕の見せ所は、調理だけではないな~と、改めて思いました。
子どもたちのおいしい給食を提供するためには、食材の知識を増やして、おいしい食材を購入する努力ができたらよいですね。
研究所でも、毎日、食材と向き合いながら、子どもにとってのおいしさを追求していきたいと思います。