監査報告書の「動物性たんぱく質比」

2005年食事摂取基準以降、見直しをした自治体の監査報告書には、「動物性たんぱく質比」の項目はありません。  しかし、監査報告書に「動物性たんぱく質比」を記入する自治体が多くあります。

動物性たんぱく質は、体で合成できない必須アミノ酸を含め、全てのアミノ酸がほぼバランスよく含まれています。全たんぱく質摂取量のうち、この動物性の割合を示す「動物性たんぱく質比」が、報告書から消えたことは、日本人の食生活の変化に関係があります。

・昔の日本人の食生活では、肉・卵・魚・牛乳の摂取量が少なく、動物性たんぱく質が不足していた。摂取量を上げるために目標値が必要だった。
→動物性たんぱく質比が30%をこえると、不足する必須アミノ酸がなくなると言われており、監査では“動物性たんぱく質比”を40%以上にするように!と指導していた。その後、摂取量が上がってくると動物性:植物性=1:1(程度)という目標値になった。

・現在では、動物性たんぱく質食品を充分摂取できている。
→1人あたり平均して約80gのたんぱく質を摂取し、そのうち動物性たんぱく質が約40g(動たん比50%)。

・「必須アミノ酸(体内で合成できないアミノ酸)」の不足のリスクが減り、動物性たんぱく質比を考慮する必要がなくなった。

このような食生活の変化に合せて2005年の食事摂取基準は変わりました。

自治体の監査で、「動物性たんぱく質比が高すぎます!動物性たんぱく質の摂り過ぎは、脂質の多い食品をとりすぎることにつながるので献立を見直しましょう!という指導をされた。」という相談を保育園からいただいたことがあります。

この指導には誤りがあります。脂肪の摂り過ぎは脂質エネルギー比を見るべきで、動物性たんぱく質比を評価する必要はありません。

基準が変わったのにも関わらず、監査報告書で給食の評価項目を見直さない自治体の対応に憤りを感じます。

自治体の監査官の方には、平成17年に厚生労働省雇用均等・児童家庭局から発行されている「児童福祉施設における給食業務に関する援助、及び指導」と「児童福祉施設における食事摂取基準を活用した食事計画について」などを再度読み返し、給食の評価項目を検討していただきたいと思います。