東京都の調布市の食物アレルギーの悲しい死亡事故以降、保育園や学校では、様々な事故防止対策がとられています。
・加工食品のアレルゲンチェック
・アレルギー食の調理の分別
・調理室内での配膳チェック
・保育士への申し送りとチェック
・保育室での配膳チェック
・子どもの喫食場所の固定
・他園児との関わりへの注意
・全園児の喫食後の手洗い・うがい
・食後の清掃の徹底
最近は、さらに「アレルギー対応食器」を使用するなど、食物アレルギーを「見える化」する動きが進んでいます。
■アレルギー対応食器を使用する効果
「見える化」とは、「見えていないものを可視化する」という意味。「意識しなくても見える」ことは、食物アレルギー事故の防止、対応の改善につながります。
「見える化」の効果は、
・食物アレルギーを持つ子どもに関わるすべての人が共通の認識を持つことができる。
・調理担当者、保育士の正しい行動を導くことができる。
・次の改善につなげるための、課題を見つけることができる。
食器の色が違えば、食物アレルギーであることは一目瞭然。子ども自身でも、自分の食べ物でないことがわかります。また、職員は、マニュアル通りの正しい行動をとりやすく、さらに問題意識を持って、改善点を見つけることができます。
■具体的な食器の色分け方法
食器を3色に分ける学校、保育園が増えています。
アレルギーがない子
・普通食 → 白色食器
アレルギーがある子
・普通食 → 黄色食器
・アレルギー食(除去・代替食) → 赤色食器
アレルギーがある子は、「新規の発症のリスク」に備えて、常に他の子とは違う、色付き食器を使います。
実は、小学校でもアレルギー発症の60%以上が新規の発症。低年齢児の保育園児は、それ以上に新規の発症があることが予想されます。
黄色の食器の日は、新規の発症、または体調不良による発症に対して気をつける。また、赤色の日は、除去・代替食のため、正しいアレルギー食が配膳されているかに注目することになります。
アレルギー児に対して、、、
・普通食の日は黄色食器 →新規発症に注意
・アレルギー食の日は赤色食器 →誤食に注意
といった対応です。
下記は、メラミン食器トップシェアの国際化工株式会社の子ども用・アレルギー対応食器です。
↓ ↓ ↓
■食器を変えることによって心配される点
クラスで一人だけ違う食器は、かわいそう!という心配の声を耳にします。
昔は、園児や保護者の精神的なストレスに配慮して、「同じもの」「似たようなもの」を作っていました。例えば、かぼちゃを使って卵に見せる等。
ここは、思考の転換が必要です。
各種ガイドラインでは、悲しい死亡事故から得た教訓を活かし、安全性を最優先にし、「見た目が違うアレルギー食」を作ることを推奨しています。
食器についても、同じこと。料理も食器も、見た目を変えて、より「見える化」することで、事故防止を目指します。
一番大切にすべきは子どもの命。何より優先すべきは「安全」です。
■アレルギーリスクを正しく認識する
アレルギー児に対して、
・普通食の日は黄色食器 →新規発症に注意
・アレルギー食の日は赤色食器 →誤食に注意
という対応にすると、、、、
「黄色食器」の日に対しての恐怖が、高まります。
実際に、アレルギー児が普通食を食べている時、黄色の食器を使用している時に、アレルギー症状を呈することが多くあります。 “新規発症”は、いつ、何が起こるかわからないから怖いもの。低年齢児を対象とする保育園において、これは正しい恐怖です。
繰り返しになりますが、小学校でもアレルギー事故の60パーセント以上が新規の発症。低年齢児を対象とする保育園では、さらにこのリスクが高いということになります。
保育園で、「今日は除去するものがないはずなのに、食べたら口の周りが赤くなった。」「あれ??」っと思うことがありませんか?新規の発症を見逃している可能性があります。
■献立の力でリスクを下げる
新規の発症への対応を強化するためには、全体的にアレルギーリスクを下げる必要があります。
最近は学校、保育園では、献立の工夫によってアレルギー食「赤色食器」を使用する回数を極力減らす努力がされています。いつ、発症するかわからない新規の発症には、事前対応ができないため、アレルギー食「赤色食器」の回数を減らしておくということです。
具体的には
・在籍する児童のアレルギー原因食物をなるべく使用しない
・使用頻度を減らす
・アレルギーリスクが高く、栄養的に代替できる食品は使用しない
など。
北海道の千歳市では、卵と乳を昼食に使用しない献立で、80%以上アレルギー対応を減らすことができています。
食器を3色に分けることは、除去食(赤色食器)を減らすという目標を明確にすることにつながります。
■さいごに
保育園では、献立作成→発注→納品時の検品→調理→配膳→喫食→食後。すべての工程でリスク管理を行い、より「見える化」を勧め、安全性を向上させる努力が必要です。
「見える化」は組織行動をとりやすくするキーコンセプトのひとつ。単に「見える」だけではだめで、見えた状態から、問題を認識することが必要になります。さらに、問題を認識したら、チームの他のメンバーに伝達することが必要。その上、伝達された問題を組織的に問題解決する組織行動が必要となります。
そう考えてくると、給食におけるアレルギー問題の対応は、なにもアレルギーに限ったことではなく、子どもの食全般にかかわる一般的な問題の見える化と組織による問題解決にほかなりません。
現在、子どもの食事研究所では、
・三大アレルゲン(乳・卵・小麦)を使用しない料理の開発
・新調理システムを取り入れたアレルギー食の開発
・アレルゲンを使用しない加工食品調査
・調理器具や食器の調査
等を行っています。
今後は、各メーカーから専門的な知識の提供をいただきながら、保育園給食のアレルギー対応の安全性の向上に貢献していきたいと考えています。