立川市の小学校で発生した集団食中毒の原因が
給食の「焼きのり(キザミのり)」であることがわかりました。
海苔が食中毒の原因になるの??
と思っている方もいらっしゃると思います。
■今回の食中毒菌はノロウイルス
ノロウイルスの特徴は、
・少ない数で発症
・感染力が非常に高い
・石鹸やアルコール消毒は効かない
・乾燥、酸にも強い
ウイルスが体内に1個入ると24時間後には100万個になるそうです!!
症状はみなさんご存じの通り、“激しい下痢とおう吐”
感染した人のほとんどの人が発症する可能性が高いやっかいな菌です。
■のりが食中毒の原因
原因となったのりの製造メーカーの見解では、原料であるのり自体については加熱処理をしているので菌が混入したとは考えにくいとのこと。
原因は二次感染。のりを切断、梱包作業を委託した会社の作業員を介して混入したものと考えているようです。
二次感染とは食中毒菌を保有した人の便や吐ぶつから人の手などを介して感染することです。
今回は、のりの取扱者がノロウイルスに感染しており、その者を介して汚染されたのりを食べて感染したということです。
■保育園で想定できる同様のケースを考える
今回と同じようなケースは保育園でもあり得えます。
<菌の付いた食品が納品されたら?>
パン、せんべい、あおのり、かつおぶし、ふりかけ、ごま、果物など
これらは多くの場合、非加熱のまま園児に提供されるので原因食品となり食中毒につながります。
<保育園の調理員が感染していたら?>
調理担当者を介して、子どもたちが菌が付いた料理を食べてしまったら食中毒が起きてしまいます。
■保育園で気を付けるべきこと(食材について)
食材のひとつである“のり”だけを取り上げて考えるべきではないでしょう。
食材を選ぶ給食担当者は、加工食品の製造工程に関心を持つことが必要だと思います。
以前、“サラダかんてん”を作っている伊那食品工業の方から、昔は人の手を介して作ることが多かった寒天ですが、弊社では厳重な衛生管理をしている工場で作っているので、食中毒の心配がなく安心して食べていただけます。是非工場見学に来てください!!」と誘って頂いたことがあります。
今はインターネットでの情報も豊富です。
加工食品は衛生管理を確認した上で使用する必要がありそうです。
また、食中毒対策としては生で食べる果物などは次亜塩素酸ナトリウムで消毒します。
・果物をシンクの中で水洗い。
・次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬してノロウイルスや細菌性食中毒菌を消毒。
野菜を浸漬させる次亜塩素酸ナトリウム水溶液は100ppm~200ppm。
時間は、100ppmなら10分、200ppmなら5分間浸漬させながら消毒して流水で洗います。
ノロウイルスは、熱に弱い性質があり食品の中心温度が85度から90度で90秒以上の加熱をすれば消毒ができます。
基本的に加熱ができるものはやっぱり安全ですね。
■保育園で気を付けるべきこと(調理担当者について)
調理担当者に下痢・おう吐等の症状がある場合は調理から外れるのはあたりまえですがその期間が問題になります。
通常は1週間程度お休みする必要があると言われています。自己判断することは避け、医療機関にて検便などの検査を行い治癒の証明書を発行してもらってから登園するようにします。
しかしながら、発症後は周囲の人に感染している可能性も高いため、登園後も手洗いを厳守し、素手の作業を避ける必要があります。
調理担当者の方からはノロウイルスについて度々ご相談をいただきます。
・自分の子どもがノロに罹ってしまっているので心配だけど、人手がなくて言い出せない。
・検便でノロウイルスが出たということで2週間休むように言われ、欠勤扱いになってしまった。
・家族全員の検査を自費で行うように言われてたけど検査は必要なのか。
ノロウイルス対策について明確に決めていない園が多い印象があります。
抗力の低い子どもたちを預かる保育園において、給食の安全性を確保するリスクマネジメントはとても重要です。
■さいごに
「神は細部に宿り給う」とはアビ・バーブルグという人が言った言葉だそうです。
美術品や音楽のような芸術においてディテールはとても大切という意味です。でも同時に「その細部は最終的には全体に統合されなくてはならない」とも言っています。
リスクマネジメントをする場合、リスクは常に細部に現れてきます。
今回のきざみ海苔のように。
でも、それぞれのリスクは常に全体に統合されなくてはいけません。海苔だけではなく、感染源となる病原菌に対して施設全体の対応方法を検討していくことが「統合」ですね。
今、食中毒に注目が集まっているこの時期、、、、
保育園給食で今後“のり”を使うかどうかという議論に留まらず、食材の調達、ノロウイルスの予防、発生時の対策について職員全体で話し合われてはいかがでしょうか?