離乳期の食事と生活習慣病の関連

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離乳期の食事と生活習慣病の関連

2019年改定版がとりまとめられた「授乳・離乳の支援ガイド」。改定の研究会に参画した、調理学・母子栄養学・食育関連分野が専門の堤 ちはる先生に、保育園給食に関わる私たちが知っておきたいポイントを聴きました。

佐橋

赤ちゃんの時の栄養状態と将来の生活習慣病の関係について教えてください。

早期の離乳開始と、小児期の肥満との関連について、一貫したエビデンスはありません。一方、生後4か月以前の離乳開始が小児期の過体重/肥満のリスクになるというメタアナリシスがあります。しかし、日本の離乳開始時期の調査結果では4か月以前に離乳を開始している子どもはほとんどいません。また、乳児期の肥満は将来の肥満にそれほどつながらないですが、幼児期の肥満にはつながることが分かっています。今回のガイドでは、離乳開始は5、6 か月になっています。乳児期の栄養指導では、身長と体重の伸びの様子を経時的にみていきます。ですから成長曲線が大事になります。

佐橋

ある自治体の献立、8か月の後期、2回食の2回目を蒸しパンなどのおやつにしているところもあります。

1歳前は、基本的にはおやつ(間食)の必要はありません。お楽しみとして少し食べることはかまいません。一般的に、保育園では、おやつ(間食)は午前10時頃と午後3時頃に、補食は、保護者のお迎えが遅い子どもに、夕食までのつなぎに出す軽食のようなものと使い分けていることが多いです。新しいガイドラインでは、「離乳の完了の頃の記述に、食事は1日3回となり、その他に1日1~2回の補食を必要に応じて与える」と記述されており、おやつ(間食)という言葉は使っていません。これは、一般的におやつ(間食)と言ってしまうと、おやつイコール甘いものと連想しやすいからではないでしょうか。第4の食事として位置づけたかったからではないでしょうか。ですから甘い飲み物よりはミルクのほうがよいです。なお、離乳が順調に進んでいるお子さんであっても、1歳まではミルクを続けてほしいです。ミルクには、ビタミン、ミネラルが含まれているので、それらをとるサプリメントのようなイメージです。

佐橋

離乳期ほど、そのお子さんと背景を見ていかないといけませんね。

親御さんに思いをはせながら、ですね。ところで、10年前に比べ、母乳育児率が10%以上増えているのをご存じですか。母乳育児をされてる方のなかには、「母乳は、赤ちゃんに良いから」と、適切な離乳開始時期とされる5、6か月ではなく、もっと月齢が進んでから離乳を開始される方もおられます。しかし、離乳開始が遅く期間が長くなると母乳には鉄がほとんど入っていないので、鉄欠乏につながりやすいです。離乳を6 か月までに開始した子どもに比べ、7、8か月に開始した子どもは、ヘモグロビンが低値になります。別の研究結果では、6か月以上母乳栄養の場合には、約60%が鉄欠乏性貧血というデータがあります。1、2歳頃に鉄が不足すると、それ以降に鉄を補充してもキャッチアップせずに、成長したときに、脳の発達・機能、例えば記憶を司る海馬にも影響を与えます。4、5 歳で補っても効果は望めません。

佐橋

母乳は栄養価が高く、飲んでくれていたら安心と思ってしまうかもしれません。

母乳は子どもにとって、最良の栄養素を含んでいますが、離乳食も最適な時期に開始することが大切です。私は、鉄分が豊富な育児用ミルク(乳児用調整粉乳)やフォローアップミルクを料理素材として使うことをお勧めしています。保育園でも使ってみてはいかがでしょうか。母乳栄養の子どもだけではなくて、鉄は摂りにくい栄養素なので、鉄不足の配慮は、みんなにしたいですね。食材としては、赤身の肉・魚以外にも、アサリの水煮缶に多くの鉄が含まれています。

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