果物が熟すとやわらかくなるわけ
●果物の老化ホルモン「エチレンガス」 果物は熟すとエチレンガスを発生します。 エチレンガスによって、果物はさらに早く熟していきます。 このように、エチレンガスは果物にとって「成熟ホルモン」のように 作用します。 ホルモンは植物や動物の中で作られ、 少量でも、組織や細胞に生化学的な反応を引き起こす作用のあるもの のことを意味します。 エチレンガスがあると、果物の細胞は近くにある 果物の細胞が熟すのをはやめます。 このことを知っていた船乗りたちは、りんごを運ぶときは 風通しのいい場所に保管して航海したそうです。 「腐ったりんご1個が樽全体のりんごを腐らせる」 ということばがあります。これはほんとうのことだったんですね。 熟していない果物は固く、色もたいていの場合は緑です。 熟すにしたがって、色は赤や黄色に変わり、固さも柔らかくなります。 ●果物の中で何が起こっているの? 果物が熟していく過程で、果物の中では何が起こっているのでしょうか。 固さが柔らかくなるのは、ペクチンという細胞間物質が分解されていくからです。 ペクチンは分解され、糖分に変化します。果物は熟すと甘くなるのはそのせいです。 ペクチンは細胞と細胞の間にあって、果物の形を支えています。 これがエチレンガスに反応して次第に分解されていきます。 ペクチンは水に溶け特に熱に弱い物質でもあります。 それで、果物を煮ると柔らかくなります。 ●人間の老化も似たところがあります。 人間の体にも細胞間物質としてコラーゲンがあります。 人間の体に含まれるたんぱく質全体の1/3以上がコラーゲンです。 例えば皮膚の組織にあるコラーゲンが少なくなると、 保水性や弾力性が保たれなくなり、年をとった感じになります。 コラーゲンに熱が加えられると、コラーゲンは壊れ、ゼラチンができます。 コラーゲンが少なくなると、固い筋の多い肉も、食べやすい柔らかい肉に変わります。 固い肉を煮ると柔らかくなるのは、不溶性のコラーゲンが 柔らかくなり、水に溶けるゼラチンに変わるからです。 料理ではゼリーやムースを作るときにゼラチンを使います。 ゼラチンで液体でもない、固体でもないようなものをつくることができます。 実験:バナナの老化を調べる 1 データ記録シートを用意します。 2 バナナの色をデジタルカメラに記録します。 3 1本のバナナを紙袋に入れます。 4 紙袋のふたをして、キッチンカウンターに置きます。 5 紙袋のそばにばななを置きます。 6 バナナの色を観察記録。3日以上、同じ時間に記録します。 バナナの色がどのように変わっていくかを観察します。 結果はどうだったでしょう。 まとめ ・エチレンガスは果物が熟すのを早めるホルモンとして作用する。 ・果物は熟し始めるとよりエチレンガスをより多量に発生する。 ・果物を近くにおいて保存するとよりエチレンガスが濃厚になり、熟すのを早める。 参考文献 Janice Vancleave:Food and Nutrition for Every Kid,1999,John Wiley & Sons Inc. |
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