久しぶりに海外のWEBサイトの紹介をしたい。
今回紹介するのはアメリカ合衆国の「食物アレルギーとアナフィラキシーネットワーク(FAAN)」。 http://www.foodallergy.org FAANは1991年に設立されたアメリカ合衆国の任意団体で、現在24000人以上の会員が世界にいる。 家族、栄養士、看護婦、理学療法士、教員、政府系職員、製薬会社などの人たちが参加しているという。 アレルギー患者のネットワークを進め、アメリカを中心としてラジオ、テレビ、メディアや学校教育を通じて アレルギーやアナフィラキシーショックなどの周知、教育活動を実施している。 また、患者グループの研修活動、アレルギー患者の権利擁護など活動範囲は広く、それなりの影響力をもっている。 このWEBサイトでは、 アレルギー反応やアナフィラキシーショックに関する研究情報 学校のマネージメント方法 給食業務上の示唆 アレルギー対応レシピ Dayly Tips など、アレルギーに関する広範な情報が提供されている。 興味を引くのは「BE A PAL HERO!」キャンペーンのページ。 PALはP rotect A Life from FoodAllegiesの略で(アレルギーから命を守ろう」という意味。 まさに、アレルギーから友達を守るヒーローになろうという運動だ。 パンフレットの中身についてざっと見てみよう。 「アレルギー反応がなぜ起こるのかについてはまだ詳しいことが解っていません。 しかし、アレルギー反応は次第に強くなっているという傾向があります。 特に、ピーナッツ、ナッツ、牛乳、卵、大豆、魚、貝などです。 アレルギー反応を引き起こす物質を食べるだけでなくさわるだけでも、 場合によっては、ほんの少しだけ吸い込んでも症状が表れ、 ときには死を招くこともあります。 だからアレルギー反応のあるこどもは私たちの助けを必要としています。 もし、君がいい仕事をすれば、PALヒーローとして学校から認定されます。 PALヒーローになるためにはいくつかの方法があります。 PALヒーローは厳しいアレルギー反応を防ぎ、命を救うような活動を行った人のことです。 あなたの学校と、フードアレルギー・アナフィラキシーネットワークはPALヒーローをたたえ、認定証を与えます。 いつかはあなたもPALヒーローになるかもしれません! アレルギー反応のある友達に関心をもっていて下さい。それが私たちすべての人を ヒーローにしてくれます。 PALになる方法を忘れないようにこのブックレットを大切に。 そして、食物アレルギーから命を守ってください。」 パンフレットにはアレルギー事故を防ぎ、アレルギーのある人が疎外感を抱くことなく みんなの中に入って生活できるためのシンプルな戦略が記載されている。 1 食物アレルギーを甘く見ないで 2 アレルギーのある友達と食べ物を分け合うことはだめ 3 食べたら手をあらいましょう 4 友達がどんな食べ物にアレルギーがあるのかを聞き、それを避ける手助けをしましょう。 5 アレルギーのある友達が病気になったら、すぐに助けましょう。 ●アレルギー反応 はく 顔や唇がはれる 息がしにくくなる 咳、くしゃみ、目から涙がでる 肌にぶつぶつができたり、赤くはれたり、かゆみがでる ●アレルギー反応を見つけたら 先生や保健室の先生に知らせる。 友達を先生のところにすぐに連れて行く。 アレルギー反応かもしれないと伝える。 こうしたことをすばやく行うことは命を助けることにつながります。 いつでもアレルギー反応は起こります。 パンフレットはわかりやすく、ボリュームも小さい。 すぐに理解できてすぐ実行できるように設計されている。 アメリカ人の場合、ヒーローの認定証を授与するというのは強いインセンティブがある。 タイタニックジョークというインセンティブに関する有名なジョークがある。 タイタニックが沈む寸前、タイタニックの船長は女性子供を先にボートに乗せるときに各国の男性に対してこう説得した。 イギリス人に対しては「ジェントルマンは女性と子どもを先に救う。」 アメリカ人には「先に女性と子どもを救ったらあなたはヒーローになれる。」 ドイツ人に対しては「これはルールなんだ!」と。 さて、日本人にはどう説得したのかだろうか?その答えは「皆そうしている」である....。 BE A PAL HERO!は典型的アメリカ型インセンティブだが、 もちろん日本にも使えるアプローチだ。 がしかし、現実に日本でアレルギー対策を学校や保育園で行うとなると 任意団体が認証するヒーローの認定証を学校が出すなんて話にはなかなかならない。 さらに国単位でそういう運動を行うとなるともっとやっかいだ。 認定基準の策定段階で行き詰まってしまうことが多いのではないだろうか。 アレルギー対策にせよ、障害児教育にせよ、ハンディがある人が集団から阻害されることなく帰属意識を育てていくことが 大切だ。そのためにはルールとして規制するのではなく、戦略が必要なのだ。 アレルギー対策はもはや私たち人類が共通にもっている課題といえる。特別な人の特殊な課題として個人の責任に帰してしまうことだけは 避けたい。 |
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