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演習 保育園における食教育ストーリーの生かし方

2001年6月22日名古屋市民間保育園連盟主催で保育士・栄養士・調理員研修会が開催された。 テーマは前回と同様「食教育の実践について」。 今回は2回目でもあるため、食教育ストーリーを創作する演習にチャレンジした。


広義の食教育では健康教育、親子関係教育、環境教育など幅広い分野を扱う。 これらの問題は望ましい食のあり方を追求すると避けて通れない問題ばかりだ。 ただ、あまりにも食教育が扱うテーマを広げすぎると 食教育の目標そのものがあいまいとなってしまう傾向がある。 今回のセミナーでは狭義の食教育を「食選択行動の形成」と定義し、食教育の目標の焦点化を計った。

前半では、USDA(アメリカ合衆国農務省)の2才から6才用のパンフレットを紹介し 食教育行動の形成に関する環境づくりについて話題提供が行われた。

2000年版のフードガイドピラミッドは2才から6才専用のパンフレットが新たに 追加されている。そのパンフレットでは、サービングなどの数値は範囲で表示することを止め、 単一の数値で表すことになっているなどより直感的に使えるようになっている。 また、家庭に対するメッセージが強化された。こどもの食選択行動の形成を考えると、 環境に対するアプローチがもっとも効果的だからだ。 また、たべものをのどに詰まらせないような安全に対する配慮、 食品衛生の問題、カルシウム量を確保するために牛乳をより多く飲まなければならない という幼児特有の問題が強調されている。

また、一般用には記述されていないが、幼児用パンフレットには、 こどもの年齢に応じたお手伝いのさせかたや、 タコスに乗せる食べ物を自分で選んで食べるなど、食選択行動を促進させ、 食に積極的に関心を持たせていくための活動例が紹介されている。

配布された資料を参考にしていただきたい。
USDA 2才〜6才用フードガイドピラミッド

セミナー後半では、保育園の食教育環境づくりに関する演習となった。

こどもの行動にもっとも影響を与えるのが親や保育士の行動である。 その意味では、保育士の行動を変えることがこどもの行動形成には効果的だ。

行動は「刺激→行動→環境の変化」という先行事象と後続事象の3セットで定義される。 環境がどう変化するか、あるいは変化しないかで、こどもの食選択行動は影響を受ける。 いいかえれば、保育士のこどもの行動に対する反応傾向は、 こどもの食選択行動形成に決定的な要素となるのだ。

実践例として健康的な食に関係のあるテーマをとりあげ、 保育士が童話づくりをする学習が行われた。

テーマはUSDAのパンフレットの中から拾うことにした。

参加者が行う演習では、
(1)こどもに伝えたい食に関するメッセージを選択する
(2)単語連想法によってメッセージに関係するキャラクターをつくる
(3)キャラクターから連想されるストーリーを作成する
という流れで、創作食教育ストーリーに挑戦した。

食教育ストーリー創作に与えられた時間はわずか20分程度の短時間であったが、 多くの優れた食教育ストーリーが創作され、それぞれ発表された。

(1)ミルクミクロマンが現れ、メイちゃんといっしょにどんどんからだが小さくなり、 おとうさんやおかあさんの骨の中を探検するというSFスペクタクルもの
(2)ひとりで食事を食べているこどもが親子で買い物に行き、 いっしょに食事作りをしたら個食が直ったという本格的な共働の食の物語
(3)お昼寝をしない和君とおひるねおばけコロリンのかわいいお話
など、そのままでも立派な絵本に採用されそうなストーリー性に富んだものも生まれた。

また、ゴハンホワイト、リンゴレッド、ピーマングリーン、さかなブルー、チーズイエロー などのユニークなキャラクターや、ベジタリアンという恐ろしい魔法使いのおばあさんなど きいただけで思わず引き込まれそうになるキャラクターも次々に生まれた。

ちなみにゴハンホワイトはもっとも力持ちでリーダーのキャラクターだそうだ。 著者は、もしあんパンマンがゴハンホワイトだったら、お米の消費量は変わっていた かもしれないと真剣に思った。

紹介されたお話は、こどもに伝えたいメッセージがしっかりと出ている ものばかりだった。それが道徳的な紋切り型の結論に終わるのではなく、 「また聴きたいお話」になっているところがたいへんよかった。

オリジナリティの点では、どこかに似たような絵本や童話があるの かもしれない。しかし、保育士が生み出し、保育士のことばで語られ、こどもがそれを聴くとき そこにはその瞬間しか存在し得ないオリジナリティがあるのではないだろうか。

食はこどもにとって最大の関心事だ。保育士がオリジナルの食教育を目的としたお話を どんどん保育園でこどもにしてあげることにより、 こどもの食に対する関心はより加速される。

私たちの実践でも、少なくともそういうお話を聞いた日に関しては、 園児は給食でいつもとまったく違った食べ方をする。これが習慣化されることによって 望ましい食選択行動は形成されていくものと思われる。

ひょっとすると、こういう食教育ストーリーを創作することによって 最も強い影響を受けるのは栄養士や保育士自身かもしれない。




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