アメリカ農務省のサイトには栄養バランスのいい食事のレシピ集も掲載されている。
日本の栄養士なら一目見ただけで幻滅してしまうようなメニューではある。
アメリカ人の食に対する嗜好性と日本人の嗜好性の違いといえばそれまでだが、
この品質の低い食事のために日本人の栄養学の専門家がアメリカの食教育を低く見てきたとしたら
それは不幸なことではないだろうか。アメリカには国民栄養や健康を高めるための強力な戦略があった。 農務省には、CNPP(Center for Nutrition Policy and Promotion)という 栄養と健康を改善するための戦略を練る機関がある。 図はCNPPが発表している2000年から2005年までの戦略だ。 この戦略はUSDAのホームページにアクセスすれば簡単に閲覧することができるので、是非 確認してほしい。 政府がフレームワークをつくり、戦略を練り、公立、民間を問わず栄養や国民生活の調査 研究に関する資源を 積極的に活用して国民の健康と栄養を継続的に改善していこうという姿勢は日本でも参考に すべきことだ。 アメリカの食の問題は、大きく分けて二つある。 ひとつは貧困を原因とするこどもの栄養状態の悪化だ。特に近年は離婚家庭が多く、 離婚した女性が育てているこどもの栄養環境は極めて悪い。それが二次的な病気を 招き、医療費や社会保障費にも大きな影響を与えている。 もうひとつは、ガン、心臓疾患を中心とする生活習慣病の増加だ。現在、アメリカ人の 死亡原因の上位に生活習慣を起因とする病気が並び、健康と栄養状態を改善することが アメリカ社会をより活性化させることに大きな影響があるとみなされている。 ある一定の状況を改善するためには、本来、継続的な目標設定の修正とチェック作業が必要である。これは 一般企業レベル、地方自治体レベル、政府レベルなど規模を問わず、どんなレベル、どんな集団にも共通の課題である。 特筆すべきなのは、行動目標は変わるものであることをきちんと表明していることだ。 日本では政治家の十数年前の発言を持ち出して批判することがあるが、 本来、国民生活の質といった相対化された価値観に関連した目標は、外的な要因によって影響を受けやすい。 常に目標を修正できるシステムでなければならないはずである。 図の中心には、「外的要因による目標の修正」という表現がある。また、外部の調査や 科学的な研究成果、国民の栄養状態の調査結果などによっても 栄養や健康の定義や目標は変貌する可能性がある。「目標設定は変わるのがあたりまえ」 と考え、どうどうと戦略の中心に添えているところがいい。 アメリカは農務省のこうした取り組みにより、貧困層についても富裕層についても ある程度の栄養状態や健康状態の改善を得ることができている。 世界一の健康食である和食をもちながら、それを生かせないで年々米の消費量を低下させている 日本と対照的だ。 国民の健康を護るのは政府に課せられた使命である。 強力なリーダーシップのもとでフレームワークをつくり、民間も含めた知識を集約して 実行に移すのは民主主義の基本。日本にも栄養や食糧政策に関し、英知を集めた 強力な戦略を練る機関がほしいところである。 参考URL http://www.usda.gov/cnpp/Misc/Plan2000-2005.PDF |
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