インターネットに関する熱がこのところ急速に低下している。今回の株価の下落は、
インターネット関連事業に対する行きすぎた投資熱がさめたことによることが
大きい。インターネットはコミュニケーション手段であり、それ以上でも、
以下でもない。Eビジネスを拡大するには、商品配送手段についての見なおしを計らなければならない。 米国ナスダックにはインターネット関連事業が多く上場している。ナスダックの凋落はそのままインターネットビジネスの 評価が低くなったことを意味する。加熱気味であった株価が、正常な範囲に落ち着いたとの見方もある。 早くからインターネットによるレシピデータの配信などを行ってきた私たちとしては、インターネットがなんでもできるとは 思ってはいなかった。今回の沈静化については、インターネットビジネスに関する一般の評価がより客観的に なったとむしろ安心しているくらいだ。 確かに、音楽、ゲームなどについては購入してダウンロードすれば、 製品を購入することができる。しかし、ピザや牛乳やチーズなど、日々の食料品の購入については インターネットで配送することはできない。インターネットが普及しても、 実際の商品の配送についてはこれまでのような、輸送システムを利用せざるを 得ないことがわかってくるにつれ、IT熱が下がってきたのだ。 しかし、現在のように、特定の商品が無駄に国内を行ったり来たりしている状況は好ましいものではない。 自動車を中心に個別の配送を行っている限り、コストも下がらないし、CO2の問題や 粉塵の問題は解決されないだろう。では、この問題の解決の糸口はどこにあるのだろう。 ●水力を使ったチューブトランスポーテーション このソリューションとしては、意外に古くからアイディアがある。 インターネットやイントラネットが普及する以前は、社内で請求書や印刷物を搬送するために「エアシュータ」というものが利用されていた。 「エアシュータ」は物を運ぶことができる。しかし、重量がかさむものや大きなものを運ぶのには限界がある。また、ビル内ならいざしらず、 インターネット網に置き換わるようなシステムを考えることは、コストや安全性の面から到底不可能だ。 そこで、空気によるトランスポー手ションではなく、「水」によるチューブトランスポーテーションを 考えてみる。これだと、比較的重量の大きな物まで運べ、安全性も高い。 コミュニティーをフレキシブルパイプによるチューブネットを張り巡らし、ところどころに商品を取り出したり 入れたりするためのターミナルを設置する。商品は専用の防水カプセルに入れられ、 水と共にチューブ内を循環する。いわば流しソーメンのようなイメージのチューブがコミュニティ内に張り巡らされるわけだ。 水流の動力は電気となるが、これは、チューブのいたるところに取り付けられた風車や太陽光でまかなうと良い。 日本においては、ほとんどのコミュニティーに24時間営業のコンビニエンスストアがある。 コンビニは生活必需品だけではなく、今や銀行業務のリテール部門もこなし、 多くの人が一日一回立ち寄る場になっている。 この傾向は将来、ますます強化されていくだろう。 地域内のコンビニ間を循環する水力チューブ網を設置する。 このチューブネットはさらに上位のメトロポリタンチューブと接続されている。 ある事業所がホームページに商品の広告を掲載し、そこに顧客が注文を入れたとする。 これまでは、企業は顧客からの注文に応じて運送会社や郵便局に配送を依頼していた。 チューブトランスポーテーションでは、配送先を指定した専用カプセルに商品を梱包し、 企業の近隣のコンビニから商品を発送することになる。これまでのようなトラックによる 輸送と比較して、梱包材を使用しないことによる、省資源、省力化のメリットも生まれる。 カプセルにはバーコードを印刷した紙を入れておくなどの方法で、目的地のコンビニを識別できるようにすればよい。 目的地のコンビニでは、水の流れに乗って、カプセルに入った商品が流れ着く。 コンビニに商品が到着すると、e−mailにより、顧客に商品の到着が知らされるという仕組みだ。 技術的な問題点は、もちろんたくさんある。 ・ターミナルの高低差による水圧の発生をどう克服するのか ・チューブのセキュリティをどう確保するのか ・カプセルがチューブ内で詰まりを起こさないようにするにはどうするのか ・安全で取り扱いやすい大きさの商品ターミナルはどのようなものなのか など考えればきりがない。しかし、いずれも原子力よりは簡単な問題だ。 ●近未来をイメージ 日本において、この不況を抜け出すためには新しい都市計画が必要だといわれている。現時点では夢物語にすぎないが、 もし実現すると、自動車による配送と比較すれば、明らかに低公害であり、省エネルギーである。インフラ整備としては 東京都などの大都市で行うと極端にコストがかかるため、小規模な実験都市で実験を行うことからはじめたらどうだろう。 カプセルの識別のための装置にしても、最初は人力で行っても充分採算があうはずだ。 インターネットで注文した商品が、風や太陽光を利用して水の流れとともに近くのコンビニに優雅に商品が届く ことを想像するだけでも楽しい。 |
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