2001年3月27日、名古屋市民間保育園連盟主催の調理士・栄養士・保育士研修会が
食教育実践をテーマに開催された。
年度末でもあり、参加者は25名であったが、その分中身の濃い研修会が行われた。 ●アメリカの食教育の現状について 前半はアメリカの食教育の現状について紹介された。 アメリカではUSDAのフードガイドピラミッドを中心にした教育が実施されている。 フードガイドピラミッドの基本的な考え方と使い方について 実際にアメリカで市販されている小学生用テキストを用いて説明が行われた。 食品選択に関しては、自己決定できる力を育てる必要がある。 「何をどれだけ食べるのか」は本人のその後の人生を左右する決定的に重要な行動である。 この行動を学習しない限り、生活週間病を防ぐことは危うい。 アメリカにおいて重要視されているFIBアプローチ(楽しく、総合的、行動的アプローチ) は、極めて子ども自身が意志決定できる力を獲得することに主眼をおいており、 日本においても学ぶ必要がある。 講習会では、今後、給食室からの提言として、以下の点が強調された。 1)家庭に対する情報提供に力を注ぐ。 2)両親が良いモデルとなる。 3)フードガイドピラミッドを教える。 4)こどもにどれだけ食べるのかを決めさせる。 5)こどもに何を食べるのかを決めさせる。 6) 罰やほうびに食べ物を使わない。 ●アドムの食教育教材を用いた演習 後半には、アドムの食教育教材を用いたゲームが紹介された。 食堂ゲームは数十種類の料理写真の中から、食べたい料理を選び、その料理の栄養バランスをチェックするゲームだ。 ベジタブルファイターズカードで遊ぶ「献立カードゲーム」や「おいしいものたべよゲーム」の実践方法が紹介された。 ベジタブルファイターズカードゲームは、10〜100までの数値が与えられている食品カードだ。 それぞれの食品カードは、赤、緑、黄緑、黄、黒の5色に色分けされている。 赤はたんぱく質、緑は緑黄食野菜、黄緑は非緑黄食野菜と果物、黄は糖質、黒はいわゆるジャンクフードと いわれる食品になっている。 セミナーでは、ベジタブルファイターズカードの数値の意味に関心が集まった。 カードに与えられた数値は、こどもが1回の食事で摂取する栄養成分量に、こどもの嗜好性を加味して算出されたものである。 点数=係数×1回の食事で使用される標準的な量×栄養価/こどもの嗜好性 例えば、魚は栄養価が高いが、こどもが比較的苦手な食品だ。いいかえれば、こどもが食べられるようになって ほしい食品であり、ここでは100点が与えられている。 こどもたちがカードゲームに親しむに従って、 食品に対する抵抗感が克服されていくことを想定してカード設計が行われたと、カード開発者からの補足説明があった。 また、エプロンショーの使い方も紹介され、参加者から詳細な質問が飛んでいた。 エプロンショーは非常にフレキシブルな素材である。自由に切ってどこにでも貼れるため、演技をする上で 自由度が高い。実際、エプロンシアターなどのテーマにも応用が利くといった参加者の意見も飛び出していた。 ●質疑応答 バズセションでは、保育園における食教育の現状と課題について小グループに分かれて討議が 行われた。 実践報告では ・積極的に行事食をとりいれ、季節感や旬をテーマに取り上げている。 ・看護士として、3色分け(熱、からだをつくる、からだの調子を整える)食品の模型を作ってみたことがある。 などの食教育実践が報告された。 また、参加者の質疑応答で、くしくも日本の栄養士が置かれている現状について多くの問題点が浮き彫りになった。 ・日本の保育園において食教育を行う場合、栄養士や調理員は食教育を行う余裕がほとんどない。 ・現実には「園便り」など限られたメディアを通じて食教育が行われているにすぎない。 ・こどもたちの前に調理士や栄養士が出て教育実践を行う機会が少ない。 今後、生活週間病の問題がクローズアップされるに従って、問題意識は高まっていくだろう。 保育サービスの本質を考えると、この分野における実践の深さがそのまま保育園の評価につながっていくことが予想 される。となれば、日本の食教育の立ち遅れの問題は、栄養士や調理士の問題としてではなく、 経営課題として認識されることが解決の糸口なのかもしれない。 |
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