給食の食材を地元の生産農家から直接購入する動きが広がっているという。生産者の高齢化、高コスト体質、海外の市場開放圧力 など農産物の生産では窮地に立たされている日本の農業。 だが、地場生産された農作物を地域で消費する動きは、今の日本の農業問題を解決する糸口として期待されている。 この地場農業の振興は、食教育にも大きな影響を与えつつある。 ■ 地場産の食材購入は米の不作がきっかけだった 近年学校給食では、日本の各地域で、地元の農家や農協で生産された食材を購入するケースが数多みられる。 この取り組みが始まったきっかけは1994年の日本米の不作だった。この「平成の米騒動」により、学校給食への米の安定供給を はかる必要がでてきたことが地元の農家から農作物を直接購入することが始まった。 これにより、政府米の位置づけはそれまでの主食の保護という性格から、「備蓄運用」的な性格のものに変化した。 それまで正式には認められなかった自主流通米が公式に認められ、政府米への給食補助金が削減されるなどの動きがあった。 1996年では、農家から直接購入されているている食材は、ほとんど米、または特産物だけであったが、2000年を迎える現在では、 子どもの健康を重視した数多くの食材(地元農産物、また低農薬野菜や有機野菜等)を、 地元の農家グループや農協から直接購入するケースが増えている。 ■ 農家からの直接購入で、食教育が変わる 市町村では、食材の安全性の確保、農業振興、地場産消費の拡大を目的に、農家からの直接購入を開始したが、 予想外に子どもに対する教育的効果が大きく、たいへん驚いているという報告が続いている。 神奈川県藤沢市では、有機無農薬野菜のアイガモ米を年に1度ではあるが学校給食にとりいれてみた。 給食の前に冊子や写真でアイガモ農法の説明を行い児童が生産者に感想文を書くなど、食教育に役立てることができたという。 来年度は農業見学も予定しているそうだ。 農家からの食材の直接購入を実施している学校では、 (1)農業を身近に感じることができるようになった。 (2)食べ物を大切にするようになった。 (3)畑にいたずらしなくなった。 (4)食べ残しが減った。 (5)食に意欲的になった。 など、等数多くの効果が現れているようだ。(神奈川新聞99年12月20日付け) ■ 地場産給食食材利用の利点 地場産の農作物を給食食材に利用することは、いろいろな意味で利点があることが改めて認識されつつある。 1. 安全性が高い 低農薬野菜 有機野菜については信頼性が高く、また一般商品についても遺伝子換え 食品の心配がない。 2.鮮度がよい 朝きり野菜等が給食で使用できる。野菜の仮性アレルギーにおいても鮮度は重要な 要素である。 3.地域全体で子どもを育てる社会環境づくりができる。 農作物生産者から直接食材が届けられることで、地域社会とのつながりが持て、地 域と支え合いながら子どもを育てる環境を作ることができる。 4.地元農業の活性化につながる。 5.子どもの食教育に活用できる。 生産者が身近にいることで、食に関心が持てる。また農業体験をする機会を持つ ことができる。 近年、社会の流れは少子化であり、子どもが安全で健康に育つことへの社会、保護者 から保育園への期待は大きい。 ■ 安心できる食材のコストバリューは? 確かに、安全な食材を確保すれば、食材のコストは増加することは避けられない。 神奈川県大和町で遺伝子組換え食品でない食材を業者発注した場合、給食費が月1人あたり13円コスト高になった。 (東京新聞99年3月16日付け) 無農薬野菜、無農薬米と指定して業者発注すれば、食材コストが増加することは、むしろ当然ともいえる。 しかし、地場型の食材を直接購入することで、安全な食材を確保するために要するコストは相対的に抑ることができる。 流通で必要な輸送コスト、保管コスト、商品の選別コストなどが考えられるが、顔が見える商取引を行うことにより、 農作物に対する信頼性が高まることが大きい。同等の信頼性を確保することを流通業者に委ねれば、コストは必要以上に増加する。 要は、子どもの安全の確保と教育的効果をどう評価するかだろう。 地場産の農作物を利用することは、子どもにとって安全な食環境を整えると同時に、よりよい食習慣を養うことができる。 貴園でも地場型給食の可能性を検討されてみてはいかがだろうか。 |
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