飼料に遺伝子組み換え技術を用いないで生産した乳製品の需要が世界各国で伸びている。
日本でも、この、オーガニック酪農で生産した牛乳を共同購入する動きが始まりつつある。
しかし、その動きはまだ緩慢だ。
■オーガニック農業とは
ひとことでいえば、エコロジーに配慮した農業をオーガニック農業という。
家畜、特に牛を広い場所に放牧し、十分な光を与え、十分に運動させて育成する。
成長ホルモンを与えたり、化学合成した食料品を与えないで育てる。
殺虫剤を用いず、天敵を用いるなどして飼料を栽培する。
遺伝子組み替え技術を用いた飼料で動物を育てることをしない。
■酪農のオーガニック化の流れ
2000年6月22日付けのワシントンポストに、
世界各国で有機農業市場が急速に成長していることを報告した記事が掲載された。
背景には、成長ホルモンを使用して育成された牛肉に対する不安や、
飼料となる牧草に含まれる残留農薬に対する不安がある。
特にEUでその動きが急だ。先進各国では、アレルギー性疾患が増加していることも影響しているものと思われる。
ワシントンポストによると、有機農法食品に対する需要は、昨年度、全世界で22億ドルまで成長したという。
今後、消費者の関心の高まりとともに、オーガニック化への流れは加速されていくであろう。
ところが、世界各国の流れと、日本を比較してみると、日本の場合、オーガニック農業耕地面積は極めて少ないことがわかる。
■オーガニック農業についての日本の地位
表1は、各国のオーガニック農業を行っている耕地面積の比較表だ。EUの耕地面積がだんぜん大きい。
それに対し、日本は、わずか40平方キロメートルにとどまる。
表1 各国の有機農法による耕地面積比較 単位(平方キロメートル)(ワシントンポスト)
EU |
39980 |
オーストラリア |
16956 |
カナダ |
9996 |
アメリカ合衆国 |
5463 |
アルゼンチン |
3480 |
日本 |
40 |
表2はオーガニック食品の市場規模である。耕地面積が極めて小さかったにもかかわらず、市場は大きいことがわかる。
表2 市場規模(単位:億円) (ワシントンポスト)
アメリカ合衆国/カナダ |
10700 |
E.U. |
7800 |
日本 |
3700 |
オーストラリア |
100 |
EUと比較して、耕地面積は1000分の1だが、生産高は3分の1まで迫っている。円高による物価高ということを差し引いても、日本では、オーガニック農業に対する需要にみあうだけの生産が行われていないことが類推できる。
■情報の公開と選択性の確立を
このところ、食品の安全性については年々関心が高まってきている。
この夏は、雪印食中毒事件が起こり、牛乳の安全性に意識が向いた。
O−157の問題、農地のダイオキシン汚染の報道の問題など、食品安全に関する事件が度々起こり、関心は高まっている。
しかし、オーガニックな酪農のような問題になると、まだ関心が低い。
生産者のコスト負担の問題や労働力の問題、農地の問題、輸入飼料の問題、流通の問題など、
あまりにも大きな問題があって先に進めない状況にある。
それがそのまま各国とのギャップにつながっている。
問題は消費者に正しい情報がほとんど公開されていないことだ。そのため、オーガニックな商品を選択しようにも
消費者は選択することができない。消費が順調に伸びていくためには、オーガニック製品についての正しい定義づけや情報公開、
ウソの記述に対する厳しい罰則が必須である。
また、それがなければ、日本はオーガニック農業について、正直者がバカを見る社会になってしまうのだ。
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