遺伝子組換え食品はないに越したことはない。しかし、なければ社会が成り立たないという側面もある。
私たちは、21世紀になってあたりまえになるであろう遺伝子組換え食品とどう向き合えっていけばよいのだろうか。 ■後手にまわった対応 市町村議会では、「遺伝子組換え食品の給食での使用」について議題に取り上げられることが多い。 2000年5月27日中日新聞での、「名古屋の小中学校は、遺伝子組換え食品使用せず」にも他の市町村 は注目しているとのこと。東京都錬馬区、佐賀市もすでにこの方針を打ち出している。 名古屋市教育委員会がこのような方針を打ち出した背景には、安全性に疑問を抱く市民グループから の働きかけがあった。「給食に遺伝子組換え食品を使わないで」と市内で集めた1万5千近くの 署名が議会に提出されたのだ。 今後、民間保育園でも、保護者からこのような対応を迫られることがあるかもしれない。 すでに遺伝子組換え食品についての方針を打ち出ささざるを得なかった施設もあると思う。 表示が義務化されていない現段階で、遺伝子組換え食品を保育所給食から排除することは、数量の 確保や価格の問題、物流の現状からみて問題が大きい。この現状を考えれば、保育所では 「一切遺伝子組換え食品を使いません。」と簡単に言うべきではない。名古屋市学校給食では「対象食品を定め、 給食には使用しないようにする。」としているが、これも保育所の物資調達システムからすると実現が難しい話なのだ。 何も対策をたてないまま、保護者から対応を迫られると、遺伝子組換え食品を使用しない方向に向かう しかなくなるだろう。遺伝子組換え食品は、近い将来、食品添加物のレベルで使われることがあたりまえになる。 使わないでおくためには、随分高いコストを覚悟しなくてはならない。家庭ではともかく、 保育園でこのようなコストの高い食品だけを使うわけにはいかない。 ■ では、保育所では何をするべきか。 この問題に対しては、遺伝子組換え食品について、できるだけ詳しい情報を保護者に提供することから 始めるのが得策だ。情報提供していく中で、自分たちの保育園でできることを模索していくべきだと思う。 多くの保育園では、食品添加物を減らすために、できるだけ加工品を使わず、手づくり料理、おやつに する等の工夫をしている。遺伝子組換え食品についても、保育園が、子どもの健康に配慮した様々な対応 を示していけば、保護者の理解を得ていくことができる。名古屋市のように、保護者から「遺伝子組換え食品 を使わないで」と言う声が上がる前に、遺伝子組換え食品に関する情報を、日ごろから積極的に保護者に提 供していくべきだ。 アドムの給食・栄養管理入門vol.10「ここまで来た、バイオ。クモ毒入り穀物の可能性」で、 バイオテクノロジーの国際的流れ、現状、背景、問題、対策等を示唆した。飽食国家に住む自分たちが 穀物生産と供給のバランスをくずし、世界的食料危機を生んだことは否めない。その延長線上に食品添加物、 遺伝子組換え食品の開発動機があるのだ。 ある学校栄養士は、食教育の一環として早速この話題について、授業の中で小学校6年生の子どもたちと ディスカッションするそうだ。このことについて、「子どもたちに自ら問題を見つけ出し、自分たちの食物と健康 について考えることができるような授業を展開させたい。」と話している。 保育所の場合、小学校のような指導内容の食教育を展開することは難しい。しかし、給食関係者、保育士が、 遺伝子組換え食品について、保育園利用者に継続的に情報提供することが、家庭への食教育につながり、 ひいては、日本型の献立内容、調理法を大切にする家庭の食環境の形成や、望ましい子どもの食行動を 形成することにつながっていく。遺伝子組換え食品問題も食物のの大切さを学ぶいいきっかけなのだ。 |
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